普通、Obsidianは「メモを書くアプリ」です。それを、AIの作業状況・スケジュール・ニュースをひとつの画面にまとめて表示し、さらに声で操作もできる「基地の管制室」のようなものにしてしまう。
私自身はまだ作っていません。まずは仕組みを理解して、いま自分が運用しているObsidianの保管庫(Vault)と何が違うのかを突き合わせてみます。
なぜObsidianをAIの司令塔にするのか|情報が散らばる問題
普段、ターミナル(黒い画面でコマンドを打つ場所)やデスクトップアプリでAIを使っていると、情報がバラバラの場所に散らばります。
- 今どれくらいAIを使ったか(トークン消費量)
- 今日の予定は何か
- 今日のニュースは何か
これらをObsidianの中に自分専用のダッシュボード(計器盤のような画面)としてまとめる。そのうえで、声だけで操作できるようにする。これが狙いです。
Obsidianダッシュボードに表示する項目|トークン使用量・カレンダー・自動収集ニュース
ダッシュボードには、次のような情報を自由に配置できます。
- AIをどれだけ使ったか(トークン消費量)
- YouTubeの分析データ
- Googleカレンダーの今日の予定
- 毎朝AIが自動でまとめたニュース見出し
さらにタブで切り替えられます。
- リサーチタブ:AIが毎朝自動で集めた「GitHub(プログラムのコードを共有するサイト)で話題のもの」「YouTubeの急上昇動画」「Hacker News(海外の技術系ニュースサイト)のトレンド」が一覧で見られる
- オーディエンスタブ:自分のYouTube動画がなぜ伸びた・伸びなかったのかの分析結果が見られる
そして「ターミナルを開いて」と声で言うと、Obsidianの画面の中にターミナルがそのまま出てきます。
音声でClaudeを操作するVoice Mode|Whisperで文字起こし、Kokoroで読み上げ
ここが一番面白い部分です。特定のキーを押すと、スマホの音声アシスタントのようにAIと会話できます。裏側の流れは4段階です。
1. 声をテキストに変換する
「今日一番大きいAIニュースは?」と話すと、それを文字に起こします。使われているのは Faster Whisper という音声認識ソフトで、ローカル(自分のパソコンの中、ネットに出さずに)で動きます。ネットに出さない=自分のパソコンのGPU(画面表示用の高性能な部品)だけで処理するので速い、という意味です。
2. どう処理すべきか振り分ける
文字になった指示は、Claude Haiku 4.5 という軽くて速いAIモデルに渡され、「これは簡単な作業だな」「これは重い作業だな」と仕分けされます。
3. 仕分け先は3階層
- Tier 1(定型作業の実行):「朝のレポートを作って」のような、あらかじめ決まった自動作業をそのまま実行して、終わったら知らせる
- Tier 2(収集済みの情報から答える):「今日のニュースは?」に対して、わざわざ検索し直さず、朝のうちに集めておいた情報から即答する。これで返事が速くなる
- Tier 3(本格的な調べ物):複雑な調査や計画作りを頼まれたときは、画面の裏側で Claude Code を本格的に起動して時間をかけて処理する
4. 答えを声に変える
できあがった返事は Kokoro という音声合成ソフトで声に変換され、スピーカーから聞こえてきます。
返事の速さをTierで作り分けているのが上手いところです。全部をClaude Codeに投げたら、簡単な質問にも数十秒待つことになります。
毎日の作業をSkill(スラッシュコマンド)に変える|AIのブレを固定する
AIは同じ指示をしても毎回微妙に違う答えを返します。これを「非決定論的」と言います。このままでは自動化に向きません。
そこで「この作業はこの手順で、こういうゴールを目指す」という形にあらかじめ固めて、毎回同じように動くSkill(決まった手順)に変えていきます。
これは、私がいま保管庫でやっている .claude/commands/ やSkillの仕組みとまったく同じ考え方です。/mindset と打つだけでプロジェクトの前提が全部読み込まれる、あれと同じ発想でした。
Skillの作り方3パターン|音声で棚卸し・操作ログ分析・突き合わせ
- ① 話しながら教える:マイクをオンにして「自分は毎日こういう作業をしてるんだよね」と喋ると、AIがそこから作業手順を抽出して「これはSkillにできますね」と提案してくれる
- ② 過去の操作履歴から見つける:過去1〜3ヶ月分の「AIに何をさせたか」のログをAI自身に読み込ませて、よくやっている作業を自動で洗い出させる
- ③ 両方を組み合わせる:自分の感覚(①)と実際の記録(②)を突き合わせて、一番使えるSkillを作る
作ったSkillは、いきなり全自動にしません。まず数日は手動で動かして結果を確認し、満足できたら「決まった時間に自動で動く」設定に切り替える。この段階を踏みます。
さらに上級者向けとして、「自動化した結果が過去の結果と比べて基準に届いていなければ、AI自身が動き方を調整し直す」という自己改善の仕組みも足せるとのことです。
ObsidianをAIの記憶にするKarpathy式|Graph RAGを使わずMarkdownのフォルダ構成だけで
ここが、いま私がやっている保管庫の話とかなり近い部分でした。
Karpathy式というのは、著名なAI研究者アンドレイ・カルパシーが提唱したやり方です。複雑な Graph RAG(情報同士を線でつないだネットワーク図のような仕組み)を使わず、人間にも読みやすいMarkdownのフォルダ構造だけで、AIに情報の地図を持たせる、という考え方です。
3つのフォルダに分けます。
- RAW(生素材):ネットから拾ってきた、まだ整理していない元の情報
- Wiki(整理済みの解説):RAWの情報をAIが要約・整理して、Wikipediaのように読みやすくまとめたもの
- Output(最終成果物):Wikiの情報をもとに作った、実際に使うスライドやレポートなど
そして各フォルダの入り口に index.md(目次ファイル) を置いておく。これでAIが「どこに何があるか」を毎回検索し直さずに済みます。無駄なトークン(AIの利用料に直結する処理量)を使わず、速く正確に答えられるようになる仕組みです。
私の保管庫でいうと、CLAUDE.md がまさにこの目次ファイルの役割を果たしていました。フォルダ構成が独自でも、CLAUDE.md にフォルダの意味と道順をきちんと書いておけば、Karpathy式と同じ効果が得られます。これは実際に体感していて、新しいセッションが 00_Inbox も 20_Logs も探し回らずに一発でたどり着きます。
Obsidianプラグイン(ダッシュボード)をClaude Codeに自作させる手順
最後は、ここまでのダッシュボードをAI自身にプログラムとして組んでもらう手順です。
- Pinterest等で見つけた「こういう画面にしたい」という参考画像をClaudeに見せる
- 表示したい項目(スケジュール、トークン使用量など)を伝えて、「全然違うデザインを5パターン作って」と頼む
- 気に入った方向性(すりガラス風の見た目、星がまたたく演出など)を選んで、さらに細かく詰める
- 決まったデザインのコード一式をzipファイルにまとめる
- そのzipをClaude Codeに渡して「これでObsidianのプラグインを作って」と頼むと、組み立てからインストールまで自動でやってくれる
途中で出てくる Hot Reload は、コードを直しても毎回Obsidianを再起動しなくていいようにする便利なプラグインです。プラグイン開発をAIに任せるなら、これがあるかないかで待ち時間が変わります。
自分の保管庫と突き合わせて分かったこと
全部を真似する必要はなさそうです。私の環境と照らすと、こう整理できました。
- すでにできている:Skill/スラッシュコマンド化、
CLAUDE.mdによる目次、Markdownベースの記憶 - 考え方が同じ:Karpathy式のフォルダ分け(私の場合は
00_Inbox/30_Resources/ 成果物、という分け方で同じことをしている) - まだ無い:ダッシュボード、音声操作、毎朝の自動収集
優先度が高いのは「まだ無い」の3つめ、毎朝の自動収集だと思っています。ダッシュボードと音声操作は見た目が派手ですが、無くても仕事は回ります。一方、情報収集は毎日やっていて、そこが自動になれば効き方が違います。
次にやること
- 毎朝の情報自動収集をSkill化できないか試す
- 自分の操作ログを読み込ませて、Skill化できる作業を洗い出す(上の②のやり方)
- ダッシュボードと音声操作は、上の2つが回ってから検討する
派手な部分から手を付けたくなりますが、先に効くのは地味なほうでした。